十二月:師走 | お正月に欠かせない 福と長寿を願う大福茶

病を癒すお茶

師走に入り、各家庭では正月準備が始まる頃ですが、京都ではその一つに<大福茶>があります。これは若水(わかみず:元旦に汲んだ清水)で淹れた煎茶に、結び昆布と梅干しを入れたもの。

由縁は諸説ありますが、本連載でもご紹介したように 、その昔お茶は僧侶や身分の高い人々しか飲めませんでした(2017年5月:日本茶)。お茶が貴族階級の間で薬として飲まれていた平安時代に、京都で疫病が流行し、空也上人が薬茶を振舞いました。それを村上天皇が服したという伝承から、<皇服茶><王服茶>(おうぶくちゃ)と呼ばれるようになったのが始まりと言われています。のちに<王>の字は恐れ多いという理由と、さらには福を招くという願いが込められ、<大福茶>と称されるようになったとか。

家庭でも神社仏閣でも

十二月に入ると、京都の茶商(茶葉を販売する店)では、大福茶として茶葉を販売する店が数多くあります。大福茶に使われるものは主に煎茶ですが、玄米入りなどもあります。また、乾物店などにはお茶に入れる結び昆布や、<大福梅>と称した小粒の梅干しが並びます。

衣笠キャンパスに近い北野天満宮でも、十二月半ばから<大福梅>の授与が始まります。境内の梅園で収穫された梅の実で作った梅干しで、「我が家はこれでないと」と必ず求める人も。

<大福茶>は正月に家庭で飲むだけでなく、正月の三が日には京都の各神社仏閣で振舞われることも多く、福と無病息災を願って一服する人々で賑わいます。例えば六波羅蜜寺(ろくはらみつじ)でもいただくことができ、伝承にちなんでこちらでは<皇服茶>として参拝客に振舞われています。

煎茶に結び昆布と小さな梅干しを入れるのが一般的。風味も良く、梅干しの酸味が胃をすっきりとさせてくれる。